山と森と侗(トン)族と私

社交習俗

トン族の社交活動は集団社交と個人社交にわけられ、特異な文化性を持っています。“为耶”トン族は集団でお互いに訪問しあうという社交習俗を持っています。これは外部の人からは“为耶”と呼ばれ、トン語では“wees yeek”といいます。この集団訪問はとても盛大で、一般的に旧暦の8月に実施されます。芦しょう隊、劇や踊りをする人など、いくつか役割があります。为耶は昔トン族の集落間で婚姻を行った際、集団でお互いに訪問しあったことが起源となっています。これによって款約を広く知らせ、また内容を説明し、民族感情を高め、社会治安のための集団習俗の一種として守り受け継がれてきました。

この訪問団の人数は各集落の人口に依っており、中には老人も青年もいますが、女性は青年期の女性に限られています。この訪問団のリーダーはトン語で“yeekdone”と呼ばれ、とても長くて青い襟巻き、ニワトリの羽、赤い毛布、刀、羅針盤を身につけています。第2~第5の位の人の服装は大体リーダーと同じですが、刀や羅針盤を持っていません。芦しょう隊は芦しょう服を着ます。出発時、芦しょう隊は3隊の合奏曲を演奏し、訪問団が整列すると円になって周りを囲みます。その後“同去曲”、続いて最小の芦しょうでのソロ演奏曲である“開路曲”、と順番に歩きながら演奏し、訪問団は出発します。道中ではお寺に立ち寄ります。訪問する集落が近くなると、訪問団は円を形成し、リーダーが丝芽草を一束持って儀式を行います。儀式が終わるとリーダーが前に出て、それに続いてみな村に入ります。この時、話したり、芦しょうを演奏したりはしません。さもなければ、人に災いが降りかかると考えられているからです。

迎え入れる集落の人たちは早くから集落の入り口で待ち、歓迎や賛美、尊敬の意を表現した詩や歌をうたい、酒をくみかわします。

訪問団は村に入ると、款坪を三周まわります。そこでリーダーが羅針盤を確認し、子午の位置に立ち、右足に印をつけます。この時芦しょう隊は入場曲を演奏しています。曲のクライマックスでホストの村の青年たちは轮耶を行い、訪問団のメンバーたちを客としてそれぞれの家に迎え入れます。二日目、客人たちは朝食を食べた後、款坪、もしくはその他の公共の場に集まって円になり、リーダーにならってトン族の款約を述べます。ホスト達は小さな円を4周つくり、静かに講款をききます。1段落述べ終えるたびに聞き手たちはみな“是呀”と賛同の声をあげます。その後ホストの芦しょう隊が演奏会をひらきます。2日目の朝食は、各個人の家から酸っぱい魚や酸っぱい肉、苦い酒を宴席に持ち寄ります。ご飯のあとは訪問団が款坪で円になって、芦しょう隊3隊での合奏曲や同去曲、ソロ演奏曲である引仁曲を演奏し、ホストの厚いもてなしに対して深い感謝の意を表します。

このような集団訪問の目的は主として款約を立規することや、集落間の友愛を深めることであるが、それは青年男女の社交活動の形式のひとつでもある。2晩の訪問の中で、ホスト側の青年男女はゲスト側の男女を誘って、お互いに歌いあい、一緒に油茶をつくります。そのような交流の中でお互いに理解を深め、それが新たな情を産み出して生涯の伴侶を見つけ出すことになるのです。



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中国, 湖南省, 懐化市, 侗族, トン族, 日本語教育, 大阪大学。わたしたちは、中国湖南省懐化市にて「日本語教育」と「観光事業」をおこない、懐化市の人々との文化的な交流・相互理解を促進することを目指す、大阪大学で活動しているサークルです。 inserted by FC2 system