山と森と侗(トン)族と私

歌舞

○ 耶
「耶」(侗語“yeeh”)は、侗族の民間の集団歌舞歌劇の衬詞(戯曲などの歌の歌詞で口調をそろえるため、またはメロディーに合わせるために加えられる詞)です。以降人々は、この衬詞をこのような歌舞の名称としました。それは、侗語の詩歌、音楽、踊りの源です。
耶には2種類の形式があり、一つは対歌耶、もう一つは群体対歌耶(グループで歌う)です。対歌耶は男女が歌広間の中で一問一答式に歌う耶歌で、対歌耶は一種の歌い踊りの芸術形式で、よって「踩歌堂」とも言います。一般的に、歌い手は男性が多いです。歌い手は、右手を一つ前の人の肩に架けて、大きな輪を作って囲み、時計の針と逆の方向にぐるぐる回ります。1人が合唱をリードし、人々はそれに合わせます。リーダーが一句歌うと、すぐに人々はその句の三音節を重唱し、このようにして最後まで歌います。
 耶歌は調子が軽快で、リズムが鮮明です。耶歌は、歴史の叙述、村落の賛美、老人の称揚、新生活の賛美などが主要な内容となっています。

○ 歌
 歌を侗族は嘎“al”と呼びます。侗歌の形式は多様で、種類も非常に多く、多声部の大歌(嘎老“al laoc”)には、豪快でまた聞く人を感動させる山歌(嘎勤“al jenc”)、やさしくきめ細かな夜歌(嘎宁“al yaemp”)、抑揚が人を感動させる侗笛歌(嘎基“al jix”)、声がよく通りまた婉曲的な弾き歌いである侗族琵琶歌(嘎琵琶)、リズミカルで力強い牛脚琴歌(嘎戈K)、低く深みのある音が人を感動させる二声部花歌(嘎喉路)、深い情が聞く人を感動させる双歌(嘎就“al goup”)、男女が愛を語らう愛の十八歌(嘎十八)やそのほかにも酒歌や茶歌などがあります。侗族大歌は最も特色があります。第一に、内容が豊富で種類が多く、メロディーの美しさが聞く人を感動させます。第二に、それは豊富な多声要素から構成されています。第三に、楽曲構成は自分たち民族の特色を有しています。第四に、歌を歌うとき、指揮も伴奏もなく、以心伝心で歩調を合わせます。1986年、侗族民間合唱団はフランスパリを訪問し、海外に侗族大歌の名を揚げました。「中国民歌には多声部がない」という空白を埋め、世界の声楽界に一つの座を設けました。

○ 侗劇
侗劇は、侗族唯一の劇のようなものです。通道侗劇は芝居の外題が多く、出所が幅広くあります。侗族民間物語、漢族民間物語、侗族琵琶歌をもとに改編した脚本があります。例えば、侗族民間物語と琵琶歌を改編した「珠郎娘美」「劉美」「卜寛」「卜道乃道」などがあります。
侗劇歌詞の韻律は決まりが厳しく、大変独特です。それぞれの段の歌詞は、韻の最後を統一し、かつ中間部分で韻を押し、一つ一つ連なった韻でなければなりません。中間部分の韻は、つまりそれぞれの歌詞の中間の二字を一つの韻とし、長い句の場合は2度中間の韻を押さなければなりません。

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中国, 湖南省, 懐化市, 侗族, トン族, 日本語教育, 大阪大学。わたしたちは、中国湖南省懐化市にて「日本語教育」と「観光事業」をおこない、懐化市の人々との文化的な交流・相互理解を促進することを目指す、大阪大学で活動しているサークルです。 inserted by FC2 system